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Japanische Klassiker mit Furigana

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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme

Aozora Bunko

だから大して心配するにも及ぶまいが、それにしても平素無断で他へ立ち寄ったことのないみゑ子が、きょうに限って無断で帰りが遅くなるというのは、ちと変であると思った。

夕飯が済んで、夜の九時になっても帰ってこない。家内の胸は、次第に騒がしくなった。ある幻影が、魔のように一瞬、頭の一隅を掠めて過ぎた。日ごろ――あるいは――と悩みの種となっていたことが、現実の姿となって行なわれているのではないか、と思いめぐらすと、いてもたってもいられない気持ちになった――いや、そんな馬鹿なことはない――と、自分の妄想を打ち消してみるが、打ち消しても打ち消しても、妄想は後から後から霧のように湧き上がってきた。

しかしただ、心強いことはみゑ子に対する信頼である。家内がみゑ子を信ずることは絶対であった。あの子は決して心を変える子ではない。どんな誘惑があっても、何処へも行く子ではない。こう考えると、自分の心配が愚かのように思えるけれど、次第に夜は更けて行くが、みゑ子はさっぱり帰ってこない。

家内は、十時ごろになってから隠居所にいる老父を起こして、みゑ子の帰ってこないことを話した。