Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
「おーい! 紀久ちゃん! 紀久ちゃん!」
だれかが後ろから大声に呼んだ。敬二郎と紀久子とは軽い驚きをもって振り返った。正勝だった。正勝は馬に乗って、枯草原の中を毬のように丸くなって飛んできた。
「紀久ちゃん! 早く来いよ」
「何か用なの? 正勝ちゃん」
紀久子はそう言うと同時に馬腹にぐっと拍車を入れて、正勝のほうへ向けて馬を飛ばした。
「おれと一緒に来てくれ」
正勝は大声に言って、すぐ馬首を傾斜地のほうへ変えた。紀久子はそれに続いた。敬二郎は呆気に取られて、馬の上からぼんやりと傾斜地を下りていく正勝と紀久子との後姿を見詰めていた。
(おれには紀久ちゃんの本当の気持ちがどうも分からない。おれを愛しているのか、正勝を愛しているのか、雲を掴むような話だ。だいいち正勝の奴が、おれと紀久ちゃんとの間に婚約のあることを知っていながら、自分の女房か何かのように勝手に連れていったりしやがって……)
敬二郎は傾斜地を下りていく彼らの後姿を見送りながら、心の中に呟いた。
2
やがて、正勝は手綱を引いて馬を止めた。馬は立ち止まって大きく息をしてから、ふたたび静かに歩きだした。