Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
十円紙幣ばかりだった。
「稲吉さん! それじゃ百五十円」
正勝はそう言って、無造作に百五十円を数えた。稲吉爺は幾度も幾度もお辞儀をして、地面を舐めるほど腰を屈めながら正勝のほうへ寄っていった。初三郎爺や与三爺もお辞儀をしては腰を屈めながら、正勝のほうへ寄っていった。正勝は煙草でもくれるようにして、その金を渡した。
「初三郎爺さんと与三爺さんは、百円ずつだったね?」
「正勝さん! おれらは本当に、あなたさまを神さまのように思いますよ」
彼らはそう言って、紙幣を押しいただいた。
「正勝さん! おれらにも少し貸してくだせえましよ。おれらこれ、貧乏で貧乏で……」
喜代治らがそう言って、頭を下げながら正勝のほうへ寄っていった。正勝は黙って彼らを見た。それから、その目を紀久子のほうへ移した。
「紀久ちゃん! 残ってる分を、喜代治さんらに上げてもいいだろう?」
「正勝ちゃんのいいようにしたらいいわ」
紀久子は顔を上げて、微笑を含みながら言った。
「それじゃ……」
正勝はそう言って、残っている紙幣を五枚ずつ数えて、鼻紙でもやるようにして彼らに渡した。
「正勝さん! おれらは死んでもあなたのことは忘れませんよ」