Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
7
乾燥し切っている木造の建物は、たちまちにして猛火に包まれてしまった。
紀久子の寝室の鉄格子の嵌まっている磨ガラスの窓に、猛火に責め立てられてき苦しんでいるらしく、両手を広げて窓に飛びかかっている正勝の姿が影絵のように映って、踊り狂っていた。
「紀久ちゃん! 紀久ちゃん! 開けてくれ!」
遠くの遠くのほうから、轟々と渦巻いている猛火の音の下で、そんな風に叫んでいる声が微かに聞こえた。
「開けてくれ! 早く早く! 紀久ちゃん!」
「寒いのでしょう? 温めて上げるわ」
紀久子は敬二郎の死骸を抱いて、降りかかる火の粉を浴びながらその窓の下に行って叫んだ。
「敬さん! わたしの本当の心がいま初めて分かってくれて? え、敬さん!」
紀久子はそう言って、固く固く死骸を抱き締めた。
「敬さん! 紀久子はやっぱり、敬さんだけの紀久子だったわ。敬さん! 分かってくれて?」
紀久子は踊るようにしながら、敬二郎の唇に自分の唇を押しつけた。
「ね! ね! あなただけでしょう。紀久子の唇に触ったのはあなただけよ。だれも、わたし、触らせなかったのよ」
紀久子はふたたび、その唇を敬二郎の唇の上に置いた。