Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうき(しょしゅつ)
放浪記(初出)
林 芙美子
Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme
店で茶をすゝりながら、老夫婦にお信さんと雑談していると、水色の蟹が敷居の上をガクガク這って行く。
生活に疲れ切った私は、石ころのように動かない此人達の生活を見ると、そゞろうらやましく、切なくなってしまう。
風が出たのか、ガクガクの雨戸が、難破船のようにキイコ、キイコゆれて、チェホフの小説にでもありそうな古風な浜辺の宿、十一月にはいると、もう足の裏が冷々とつめたい。
十一月×日
富士を見た
富士山を見た
赤い雪でも降らねば
富士をいゝ山だと賞めるに当らない。
あんな山なんかに負けてなるものか
汽車の窓から何度も思った徊想
尖った山の心は
私の破れた生活を脅かし
私の瞳を寒々と見降ろす。
富士を見た
富士山を見た
烏よ!
あの山の尾根から頂上へと飛び越えて行け!
真紅な口でカラアとひとつ嘲笑ってやれ
風よ!
富士はヒワヒワとした大悲殿だ
ビュン、ビュン吹きまくれ
富士山は日本のイメージーだ
スフィンクスだ
夢の濃いノスタルジヤだ
魔の住む大悲殿だ。
富士を見ろ!
富士山を見ろ!
北斎の描いたかつてのお前の姿の中に
若々しいお前の火花を見たが…………
今は老い朽ちた土まんじゅう
ギロギロした瞳をいつも空にむけているお前――