Japanische Klassiker mit Furigana
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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Lesen Sie 新・水滸伝 (しん・すいこでん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 684.899 Zeichen · 1374 Bildschirme
たちまち、一ト桶の焼酎は底になってしまった。
「ああ、こたえられねえ。こんな山路で思いがけなくぶつかッたせいか、甘露とも何とも言いようがねえな。暑さもすッかり忘れたぜ」
「やいやい。機嫌ばかりよくしやがって、焼酎の値段もまだ訊いていねえじゃねえか。酒屋さん、一ト桶干したよ、いくらだい」
「一荷十貫さ。片桶だから五貫だよ」
「よしきた。そら五貫文」
一人が銭を渡していると、べつの一人が、
「――もう一ト椀、負けときな」
と、片荷の桶の蓋を取って、すばやく中へ椀を突っ込み、一ト口がぶと飲みかけた。ひょいと、振り向いた酒売りは、
「あっ、いけねえッたら!」
まだ半分残っている椀の酒を、いきなり、引ッたくろうとする。ところが、椀を持った小商人は、くるッと、巧く身を外し、そのまま松林のうちへ逃げこんで行った。それをまた、酒売り男も、片意地らしく、
「畜生ッ」
とばかり、追っかけていったものである。すると、後に残っていた連中はまた、その隙をいいことにして、これまた、も一つの椰子椀で、明き巣の桶にたかりだした。ふと、振り向いた酒売りは、さらに仰天した姿で、
「泥棒っ」
馳け戻るやいな、遮二無二に、椀を奪りあげた。