Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わたらせがわ

渡良瀬川

大鹿 卓

Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme

Aozora Bunko

「それはわしが出ていっても堤防の切れるものは切れる」と正造は笑いながら答えた。「しかし、小事というのはちがう。君等が国家問題に関係し、わしが村の問題に関係する。それぞれ分を越えたことといえるだろうか。そんなことはない。人はどんな小さな事柄でも、そのことに当面すれば人間の本分を尽すのが本当だろう。自分は大臣だからといって、人の溺れるのを見過していいはずはない」

「そういえば、それにちがいないが、しかし……」

「わしは議員として務をしているときは国会議員だが、こうして村にいれば、村人と変りない。諸君たちもまたわしと何等異るところはないはずだ」

やがて正造が足を洗って庫裡へあがったのをしおに、村人たちは笠をかぶって帰っていった。

翌日の午後、正造は伊藤を伴ってふたたび舟津川へ出かけたが、平地は悉く濁水に浸されて一面に大きな沼が現出したようであった。藁屋根が水面に掛け渡して作ったように浮び、その間を田舟で往来していた。遙かに対岸を望むと、そこもまた雨のなかに茶色の水面を湛えていて、茫々と果しなく煙っていた。正造はついに舟津川へ近寄ることができずに佐野へ引きあげた。