Japanische Klassiker mit Furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme
「こら、こういう所で政談演説などしてはいかん」
「なぜ、こういう場所ではいけないんです?」
「届出がしてないだろう」
「馬鹿なことをいい給うな。政談演説などとは君のこじつけだ」
二人の間にしきりにいい争いがはじまった。谷が渋茶の茶碗をおいてすッくり立ちあがったと思うとつかつかと突き進んだ。身の囲りに一陣の風をまくような凄じさだった。顔を見ると真赤に憤りが発していた。だが、谷は巡査を一睨みしただけで沈黙させると、先刻からその場の経緯に固唾をのんでいる村民たちの方へ目を移し、
「諸君、私は谷であります。きょうは有志の方々の案内によって、鉱毒被害の実際を見つつここに参ったのだが、ただただその激甚なのに驚くばかりである。諸君の父祖伝来の地がこのように不毛に帰し、諸君が糊口に窮しておられることを役人の言に偽られていたとはいえ、今日まで知らずにおったのは、まことに申訳ない。しかし諸君、今後はいささか安んぜられよ。この事実を知ったからには、私も徒手傍観しているものではない。必ずや諸君の土地に安んじて農耕にいそしめるよう、諸君の願望を達するよう、尽力するつもりである。この老躯が多数の被害民諸君のために役立つならば、一死もまた辞さない覚悟を持っている……」