Japanische Klassiker mit Furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme
ついで俥で麹町署へと護送された。
丁度その頃、芝口の越中屋へ見知らぬ洋服の男が走りこんできて、戸口から呶鳴りたてた。
「大変だ、大変だ。事務所の人は誰かいないか。田中さんが直訴をした」
左部と須藤が顔色をかえて廊下を走り出てきた。
「田中先生は、どうしました?」
異口同音に息をはずませてたずねた。だが、男の答は、多勢の警官に取囲まれて警察へ連れて行かれたらしいというだけであった。行先がどこの警察かもわからなかった。居合せた人々はあまりに事の重大さに、ただ不安げな眼差しを交して、溜息をつくばかりだった。
やがて正造の引致されたのは麹町警察署だという知らせがあった。越中屋では差入れの弁当、差入れの毛布と騒ぎだした。左部が麹町署へ駆けつけた。言葉にこそださぬが、誰もみな正造の生還は覚束ないと思いこんでいる愁い顔だった。ハルとキデの二人の女中までが、用事の隙々に主のいない正造の部屋を覗きにきては、前掛を顔へあててすすり泣いていた。変事をきき伝えて、新旧の知己、弁護士、新聞記者、見知らぬ人々まで親疎それぞれに、成行を憂慮して様子をききに来るので、越中屋の玄関は夜半まで混雑が絶えなかった。