Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
――花世は、爛れた眼を、あげて、その姿にまた泣いた。情けない、丸腰になった、男の姿を――。
「お屋敷の前後、途中、辻々、手配りは充分ですぞ。見苦しい事はなさるだけ野暮じゃ、よろしいかの」
こういって、東儀は、郁次郎の反撥のない腕を、自分の逞しい腕の下にぐいと抱え込んだ。
――引ッ立てて、廊下へ出る。一枚の戸が外れていた。
そこから、庭先を見ると、植込の間には、いつのまにか、多勢の捕手がなだれこんでいた。そして一組は、提灯をかざして、築山の裏の新しい土の色を見つけて、そこを、掘り返している様子だった。
「ああ! ……」
と、花世の絶望的な声がうしろで聞えた。
振り顧って、郁次郎が、何かことばをかけようとするのを、東儀は、腕を締めつけて、すこし大股に、玄関まで引ッ立ててしまった。そこには、土まみれになった四、五名の捕手が、
「探り当てました、これでしょう、昨夜の紛失物は」
と、てがら顔に、築山の裏から掘り出したという、蝋人形の首をかざして待っていた。
郁次郎は、慄然として、顔を反けた。
「さ、お歩きなさい」
彼は、幾たびとなく、背中を突かれた。しかし、足の関節が外れたように、歩みが乱れていた。