Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

破滅

「もしや、花世が?」

と、疑って、すぐに、駕のタレを刎ねのけてみると、中は空ッぽだった。提灯の裏側には、下総臼井宿宿問屋と、小さく書いてあるが、その駕かきは、どこへ行ったか、門前には見当らない。

「おや、これは下総から、ぶっ通しで来た駕らしいが」

「主人の五百之進が帰ったものと見える」

「じゃ、花世もまだ奥にいるだろう。――羅門氏、こんどこそは、逃がさぬように、ご助力をたのむ」

「心得た」

二人は、ばらばらと、邸内へ駈けこんだ。

破滅

たった今、大勢の捕手が踏みあらした屋敷の中は、まだ、土足の痕も、拭かれていなかった。

「――郁次郎殿は? 郁次郎殿は?」

その中へ旅から戻ってきた五百之進であった。屋内の有様に、さっと顔いろを変えて、そう叫びながら、奥へ、駈け込んで来た。

が、そこには、もう郁次郎の姿はなかった。

寂しい夕暮を守る一つの灯の下に、彼のはいって来たのも知らずに、畳に顔を沈めて、泣き伏している花世の傷ましい姿だけがあった。

「これ! 花世」

「あっ……」

と、びっくりして、

「お父様」――と縋りついた。

「何としたのだこの有様は。郁次郎殿は、いかがいたした?」