Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
薊の毒舌
――では玉枝、ずいぶん気をつけて行くがよいぞ」
「玉枝どの、お名残惜しいが、それではここで……」
小禽の声。雨のような朝の光線。
人の姿は霞んでいる。
国家老の大村郷左衛門と主水の父子であった。そして、まだ朝まだきの裏門から送り出されて出たのは、昨日、この山荘に着いたばかりの女客――女の密使――人間の指を入れた小筥を持ってここを訪れた怪美人玉枝であった。
玉枝は、昨日と同じ旅装いに、杖、菅笠を片手にして、
「お別れいたしまする。それでは、郷左衛門様にも、主水様にも、ご機嫌よう……」
「ム。次の吉報を待っておるぞ」
「はい、きっとまたすぐに、指を入れた小筥をお送りすることになるでしょう」
ニッと意味ありげな笑靨をつくって、そのまま、二人に別れて歩み出した。
道が、山陰に曲がる時、玉枝は、もういちど含月荘の方をふり顧って見たが、大村父子の姿はもう見えなかった。
「……そうだ、同じ道を歩いて戻るのは智恵がない。きょうは、この四明ヶ岳から峰づたいに、大文字山の裏を通って、三井寺から大津へ抜けて見ましょう」
独り語に、こう呟いて、山の空を見上げた。
つうッと、色羽ネの矢のように、小鳥の尾が、碧い空から谷間へ掠ッて行く――