Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

あの顔

「そこじゃて……」

と、老人は半眼をふさいで、考えこんだが、その時ふと、東儀与力の眸を、稲妻のように脅ろかしたものがある。

あの顔

それは、鶉坂の門から、ここへ上って来た痩せぎすの美しい小娘だ。何か、重箱のような物を胸にかかえて、愛縄堂の方へ来かけたが、客がいたので、ついと、養生所の方へ戻ってしまった。

「や。や。あの女だ! あの女だ!」

彼は、あぶなく口走るところだった。――一昨日、唖聾を石倉で調べた時、鉄砲の轟音といっしょに、窓から消えた奇怪な女の顔!

その女と、今の娘。

どこと言って違うところはない。確かにあの顔だ。これが自分の眼の狂いだったら、与力の職を抛ってもかまわない。

彼は、昂ぶる動悸を、丹田で抑えつけながら、

「老先生――」

「なんじゃ」

「妙なことを伺いまするが……」

つとめて平静を装っても、舌がかわく、眉が硬ばる。ごくりと、唾を嚥んで、

「今、あちらへ参った美しい処女は、ご当家の召使いにございましょうか」

「いや」

と、かぶりを振りながら、老人は、堂の窓から木の間を透かして、

「違う。わしの手元に、女子はおらん」

「では、出入りの町人の娘か何かで?」