Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
槍の一群
「――見えませんか」
と、白い片方の手を真ッすぐに伸ばした。
「あっ」
と、八弥は思わず、地へ、首を竦めた。女の手には、十手よりも遥かに短い短銃がつかまれていた。その白い拳の蔭からじっと見すえている眼は、少し笑いをさえ含んで揶揄的に光っていた。
八弥は、一歩も動き得なかった。跳びつくには、間があり過ぎるし、身を起せば、同時に弾が来るにちがいない。その全神経をつかっても足りない気構えのなかで、
(花世か? 別人か?)
と彼の思判は騒ぎみだれた。
槍の一群
かなり近い距離だ。そこで、瞬間に見た判断では、やはり実によく似ているという以外一歩も出なかった。花世とも言いきれないし、別人とも思いきれない。
「――見えませんか」
女が、もう一度そう言ったら、その声こそ、花世か花世でないかを明確にするかも知れないと待ち構えたけれど、女は、それっきり、無言であった。
八弥は、畸形な爬虫類のように、肘、膝、肩までを地に摺りつけたまま、眼だけを相手の筒口に向けて、ジリジリと前へ迫り出した。
しかし、彼が一尺にじり出すと、女も、一歩後へ退いた。彼が横へ身を曲げると、短銃の筒もそれについてうごいた。