Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

脱走同心

「あっ、花世! ……」

ギシリッと、軍鶏籠が少しうごいた。

郁次郎は、くわッと、血走った眼をして駕の穴から外を見廻した。三人の男は、寝ずの番の名にそむいて、ぐったり柱に倚りかかって居眠っている。

「ああ、花世だ。……あの鈴慕の曲の節廻しは、たしかに、花世に違いない。小さい時から、あれは、尺八が好きだった。五百之進殿も好きだった。そして、いつのまにか、二人して、習うともなく吹き覚えたのが、あの鈴慕の曲一つ……」

彼はもがいた。

体の自由は利かないので、眼ばかりがいらいらとうごく。いらいらと、眼が悶える。

「花世だ……ええ会いたい! ……ひと目でいい! たった、ひと目でも」

――その時、裏口から、そっと抜け出して行った者がある。それも、懊々として眠らずにいた南の同心加山躍蔵であった。

脱走同心

「はてな? この深夜に」

耀蔵は、寝衣を解かなかった。

不思議な尺八の音に、跫音を偸んで、そっと表の方へ廻って見ると、閉め切ってある窓の外に、尺八を持って、じっと、俯向いている細腰の――白い人影。

かしらには天蓋、身には、袈裟掛絡。

「オヤ、虚無僧だな」

四、五間ほど離れた天水桶の蔭に、耀蔵は、じっと屈み込んだまま、様子を見ていた。