Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
「しッ……耀蔵」
釘を踏んづけたように、ぎくと足をとめて、
「待てよ、ちょッと」
「どうした?」
「あれに、妙な奴が佇んでいる。……今、ホウ、ホウ、と口笛を吹いた」
「いや、そう聞えたのは、梟だろう」
「そうか、しかし、怪しい風態じゃないか。……オヤこっちへ来た」
蟋蟀のように、カサリと、草の中にかがみ込んで見ていると、静かに、雪駄を摺る足音が近づいて来る。
夜目にも色の白い侍だ。が、惜しいことに、その白さは目と鼻のあいだがちらりと見えるだけで、眉深に頭巾に隠されている。服装も黒ずくめで、刀の鐺が羽織の裾を蝙蝠のつばさのようにぴんとさせていた。
静かに――チャラリ、チャラリ、と眼の前を通り過ぎて行く。
「なんのこった、山猫をひやかして帰る御家人か、どこぞの次男坊じゃないか」
二人は、草の中で、黙笑を見合ったが、すぐに飛び出すわけにも行かないので、跫音をやりすごしていると、また一つ、御霊廟のうしろの方から黒い人影が来るのを見た。
月の斑が、チラチラと視覚を紛らわして、はっきりと判らないが、脚絆手甲をかけている百姓態の大男だった。背中に、何やら重そうな物を背負いこみ、手には、杖みたいなものをついて、ずんぐりした体を屈み加減にして、歩いて来る。