Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
と、唐突に襖が開いて、
「父上」
何か、どきッとしたように、玉枝も郷左衛門も同時にふり向いた。
「えい、吃驚いたすわ。誰かと思えば、主水ではないか」
贅沢な絹物と大小に飾られた若い侍であった。父に叱りつけられて、顔を紅めたまま、
「お宥し下さい。でもただ今、楼上の大殿から父上を呼べというお伝えがございましたので」
「殿がお召しになっておるのか」
と、郷左衛門は苦い顔をつくって、
「――じゃあしかたがあるまい。あの四層楼の梯子を上がり降りいたすのはやりきれぬが、ちょっと先に行って参ろう。これこれ、主水」
「はい」
「その間に、玉枝を寛がしてつかわせ」
と、席を立ちながら、今度はその玉枝に向って、
「また殿様の愚痴を聞き飽いて来ねばならぬが、その小筥の品は、立ち帰って来てからゆっくり見ることにいたそう。その間でも、うかつな場所へは置かぬように」
言い残して、橋のように永い廻廊を、白足袋で踏んで行った。
奥から奥へと、その廊下づたいに進むと、やがて突当りの欄間に、「花園猥入不可」と白字彫の木額がかかっている。またその下の柱には小さな欅の板に、
――錠口番の許可なくして入りたる者は死罪。