Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

「しかし、どうして、女の死顔が笑っているのでしょう」

「眠っているところを、一突きに、刺し殺されたものと思う。――情痴の遺恨だな、これは」

「お説に同感です。けれど、ここに不審があります」

「何か」

「死骸の左の手を検めてみると、人差指が一本切り取ッてあります」

「情痴の下手人が、持ち去ったものだろう」

「それならば、髪の毛とか、小指とかを、切りそうなものですが」

「いや、争う場合に、切り落されるという例もままあるから、その指は、あまり証にはならぬ。もっと重要なことは、女の髪油の匂いだ。――江戸の女は、上つ方で、伽羅油、町方では井筒か松金油と限っている」

「なるほど、少し、薫りが違いますな」

「その匂いは、長崎土産の薔薇香という舶載油にちがいない。まだある、その長襦袢の模様は、唐人船ではないか。してみると、この女の情人か、主かは、長崎の方に知行所を持つ武家か、縁のある男と見て、大体、間違いはあるまい」

「それだけ伺えば、だいぶ目星がつけ易くなりました。両名して、きっと女の素性を洗って参ります」

「いや、その手傷じゃ、二、三日は無理だろう。充分に加療して、それから働いてもらいたい」