Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
父情の闇
「長命のわずらいじゃ」
と、老人は嗟嘆した。
上方の名捕手羅門塔十郎と、江戸の大先輩塙江漢とは、ここに初めて、この事件を介しての初対面を交わしたのであった。両雄の眼光、双方の立場、自然と、穏やかでないものがある。
父情の闇
「羅門」
と、老人はすぐに開き直って、
「――今、わしが言ったことばに、何ぞ、異論があるようじゃが……」
「いかにも、大いにござります」
「何、大いにあると」
「さればです!」
と、羅門も容を正して、真っすぐに、胸を張った。
「調書について、三つのご反説、いちいちご尤もにはござりますが、まず第一に、覆面の男が郁次郎なりや否やのお疑いは、ご無用にござります。何となれば、それは、自分をはじめ、同心の加山、波越らも、しばしば目撃しておるところで」
「待たれい。――覆面なれば、顔容もよく分らぬはず。殊に、それはすべて夜陰ではないか」
「のみならずです!」
「ウム」
と、老人はあらい息を抑えて、羅門を見つめた。
「先頃、平賀源内の博物会があった折、老先生のお知慧を拝借して、女笛師お雪の蝋人形を出陳いたしましたところが、その前に佇んで、人知れず涙を拭いていた浪人がございました」