Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

「……ご心中、お察しいたしまする」

わずかに、そう言うと、

「加山! 朝までだ」

と、老先生は、突拍子もない声で、だしぬけにさけんだ。

「――夜が白むと同時に、郁次郎は、藪牢のまえで刑刀の錆になるんじゃ。朝までだ、朝までだ」

「ああ、それまでの、お命でござりますか」

「死なしてたまるか。わしは、殺さん」

「――と、仰っしゃっても」

「まだ時刻はある。夜明けまでは、間がある」

「でも、今鳴ったのは、もう石町の九ツ(十二時)です。老先生、ちょうど、きょうとあしたの境、今が、真夜なかでございます」

「……ああ、そうか」

老人は、熱した頭を、時間の観念にさまされたように、力なく、声を落した。

「いくら、わしが、捕物の名人でも、半夜のうちに、この難事件は片づかん。……だが、加山」

「は……」

「およそ……」

と、彼の態度は、俄に、ぴたりと落着いた。ふいに、耀蔵は、厳粛な気に衝たれて、その顔を仰いだが、老先生の眸は、眼の隅に片寄って、あらぬ方を、じっと見ているようだった。

おや?

と、耀蔵も、思わず、その方へ首を曲げかけたが、老人は、それを、あわてて遮るように、

「加山、聞いておるか」