Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
十五夜をすぎると、秋は急に深まってくる。
「――ぜひ老先生の、ご名断を仰ぎたいと存じまして」
東儀三郎兵衛は元気がない。まったく、あの唖聾の吟味に根気をつからしたものと見えて、数日の後、とうとう兜をぬいで、鶉坂の大先輩、塙老人のまえに辞を低くして、教えを仰いだのである。
老人はひと通り聞いて、
「それやあ、惜しいことをした。実に、惜しい」
「えっ、何か、ぬかりがあったでしょうか」
「だが、貴公の落度ではない。最初に、唖聾を捕えた時の二人の手ぬかりじゃ。まだ若いからしかたがないようなものの、残念なことじゃった」
「ははあ? ……とは何故で」
「唖聾は、何者かにあやつられている手先とわしは観る。張本人は、その折、先へ行った黒衣の侍だった」
「あっ、なるほど」
「いちど懲らした魚は、なかなか二度針を食わぬ。これや、難事件になるな」
「殺害された女が、万一、ご大身の部屋方であっては、後日に、大失態と、お奉行も心痛はしておりますが、皆目五里霧中の状態なので、ほとんど、困惑しております」
「いまだに、何処からも、届けも出ねば、騒ぎ出しても来ぬ点をみると、よほど身分のある婦人か、でなければ、巧みに現場を伏せてあるものとみえる」