Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
と、前黄門亀山公の家老、大村郷左衛門は、そこにいて、うしろにいる子息の主水へ向って、
「これ、早速あれを受け取って、直手とある送り状へ、わしの印章を捺してつかわせ」
「父上、また小箱が来たんですか」
「よけいなことを申さずともよい。はやく捺してやらんか」
「飛脚屋、ここへ持って来い」
「へい」
と、耀蔵が、何気なく縁の側まで寄って、それを主水の手へ渡すと同時だった。
「廻し者め!」
床下から、ふいに、伸びてきた手が、彼の脚をつかんだ。うしろに立っていた山侍は、同時に、彼の襟がみを掴んでいた。
「あっ! ……な、なんとなされます」
「黙れッ」
大村郷左衛門は、ぬッくと立って、怖ろしい眼で彼を睨めつけた。
「其方は塙江漢とやらいう老いぼれの無役者に加担いたして、畏れ多くも、前黄門龍山公のご隠居所を窺いに来た犬であろう」
「やっ? ……」
耀蔵は、あまりのことに、口がきけなかった。――どうして、こう早く、自分が着かないうちに、自分の素性が観破されてしまったのだろう?
「それっ、縛めろ!」
悠々と、郷左衛門が、第二の喝声を吐いた時には、もう山扮装の侍たちが、蟻のように、彼の周囲を取りかこんでいた。