Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
絶望絶叫
――ああ、それもわずかのうちに」
絶望絶叫
岩壁の暦は、また一本、数がふえた。
――二十三。
今朝まで、からくも、彼の生命を繋いで来たのではないかと思われる岩肌の青苔も、すべて、彼の爪に掻きとられて、牢内に、青いものは失くなった。
彼は、土を削って、口に入れたが、しばらくすると、胃の激痛と共に、吐いてしまった。
暦を記録すると、一日の仕事は、何を食うべきかということだった。彼は、すばらしい僥倖を掴んだ。一念になって、牢の中の石ころを剥っているうちに、一匹の蟇を見つけたのである。また吐くといけないという要心から、その日は、蟇の片股を食い、晩には、皮を食い、翌朝は、すべてを食べた。
――岩壁の暦、二十四。
蟇に味をしめて、彼は、夕刻になると穴の奥から外へ出て行って、また帰って来ては穴の奥に貼りついている蝙蝠を捕る工夫をこらした。蝙蝠が食えるか、食えないか、そんな常識は、彼にとって問題ではない。
――岩壁の暦、二十五。
今日まで、生きていられるのは、水と苔と、蟇のおかげである。蝙蝠はなかなか捕れないが、彼は、牢の鉄柵のそばまで這い出して、数匹の昆虫を捕って食べた。