Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
ただ江漢老人の説と一致する点は、唖男は偽片輪ではなく真の唖聾にちがいないということと、覆面黒衣の奇怪な侍が、この罪悪の裏にひそむ重大な人物であるという点だけであった。
「その覆面の男が捕まる日も遠くはありますまい。これ、この通り曙光は見えておる」
と、塔十郎は前の笛掛のところへ戻って、二本の京笛をつかんで来て東儀与力に示した。
「ごらんなさい、この笛の銘を」
一本には、「野分」と切銘があって、下に小さく佐渡平と誌してある。
「あ、これは、殺された佐渡平の持ち笛ですな」
「そうです。あれにある笛は、みなお雪の所へ習いに来た弟子たちの笛でしょう。が、それはとにかく、この方を早く一見して下さい」
もう一本のものには、「時雨」という銘があって、そのわきに、虫のような細字で「郁」という一字が彫ってあった。
「郁?」
と、口のうちで呟きながら、東儀与力は不審そうに、
「これは一体、何者ですか」
「すなわち、佐渡平を殺し、お雪を殺害した下手人、かの覆面の男の名です」
「えっ、どうしてそれが分りますか」
「吹いてごらんなさい、その笛を」
「鳴りません」
「鳴らぬはずです。叩いてみれば分りましょう」