Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
と、上がってしまった。
若い小間使は困った容子であったが、東儀が誰であるか、どんな役目の者かは、知っているので、恐々、奥の客間に通して、茶を出しておいた。
と――二人がことばもなく、寂然と、坐り合って、花世の帰るのを待っていると、二間ほど隔てた奥の室で、人の咳ばらいが聞えた。
「? ……」
二人は、無言の裡に、眼を見あわせた。
無人だといい、主人も知行所へ旅立ちをして不在だといったのに、今の声は、たしかに男の咳ばらいである。
同じような疑問を抱きながら、しばらく、羅門も東儀も耳をてていると、やがて、そこの部屋の襖があいた。そして、すすすと、辷るような跫音が廊下づたいに近づいてきたかと思うと、隣の部屋をのぞいて、
「花世どの、花世どの……」
と、呼んだ。
つづいて、独り語が洩れた。
「おや、お部屋にはおらぬのか。……ははあ、花を挿けておられるな、では、客間か、花世どの」
と、こんどは、二人の控えている客間の境を二尺ほどすうっと開けた。
「やっ?」
東儀三郎兵衛は、倒れるばかりに驚いて、思わず大きな声を発してしまった。
開けた方の者も、吃驚したのであろう、はッと、顔いろを変えて、