Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
毎日、鶉坂へは、たいへんな贈り物が来る。
江漢老人は、大迷惑な顔で、
「わしは、今日まで、殺生をした罪ほろぼしに、これからは、伜と共に、人だすけをやるつもりじゃ。それを、人様迷惑になっては、大いに困る」
と、怒らんばかりに断ったが、次々にやって来ては、怒りきれない。たちまち、養生所の家具一切から、庭、門、垣根まで、寄附で出来てしまった。
「あの、愛縄堂とは、どういうわけですか」
と、来る客は皆、必ず、その木額の意味と、奥の変な木彫人形の由来をたずねた。
老人は、きまって、こう話した。
「――十手捕縄をもつ人間は、鬼のごとく無慈悲なものと思われているが、人間皆悪、人間皆善、情涙には誰も変りはない」
「成程、そういうものでしょうか」
「で――わしは、ひとりの罪人を獄門へ送ると、必ず、一つの木像を彫って、朝と夕に、供養しておった。――それが三十年のあいだなので、いつのまにやら、あんな数になったんじゃ」
世間は、奇を好む。
この話が伝わると、誰が発起ともなく、養生所の新築披露目をかねて、一つ、希有な大与力の隠退を記念する捕縄供養をやろうではないか――イヤ、やらせようではないか、と他から騒ぎだした。