Japanische Klassiker mit Furigana
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いなかきょうし
田舎教師 他一編
田山 花袋
Lesen Sie 田舎教師 他一編 (いなかきょうし) von 田山 花袋 (たやまかたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 156.097 Zeichen · 312 Bildschirme
三
唱歌の時間であるとみえて、講堂に生徒が集まって、やがてゆるやかなオルガンの音が静かな校内に聞こえ出した。
三
村役場の一夜はさびしかった。小使の室にかれは寝ることになった。日のくれぐれに、勝手口から井戸のそばに出て、平野をめぐる遠い山々のくらくなるのを眺めていると、身も引き入れられるような哀愁がそれとなく心をおそって来る。父母のことがひしひしと思い出された。幼いころは兄弟も多かった。そのころ父は足利で呉服屋をしていた。財産もかなり豊かであった。七歳の時没落して熊谷に来た時のことをかれはおぼろげながら覚えている。母親の泣いたのを不思議に思ったのをも覚えている。今は――兄も弟も死んでしまって自分一人になった今は、家庭の関係についても、他の学友のような自由なことはいっていられない。人のいい父親と弱々しく情愛の深い母親とを持ったこの身は、生まれながらにしてすでに薄倖の運命を得てきたのである。こう思うと、例のセンチメンタルな感情が激しく胸に迫ってきて、涙がおのずと押すように出る。
近い森や道や畠は名残りなく暮れても、遠い山々の頂はまだ明るかった。浅間の煙が刷毛ではいたように夕焼けの空になびいて、その末がぼかしたように広くひろがり渡った。