Japanische Klassiker mit Furigana
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いなかきょうし
田舎教師 他一編
田山 花袋
Lesen Sie 田舎教師 他一編 (いなかきょうし) von 田山 花袋 (たやまかたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 156.097 Zeichen · 312 Bildschirme
三十二
女の室は六畳で、裏二階の奥にある。古い箪笥が置いてあった。長火鉢の落としはブリキで、近在でできたやすい鉄瓶がかかっている。そばに一冊女学世界が置いてあるのを清三が手に取って見ると、去年の六月に発行したものであった。「こんなものを読むのかえ、感心だねえ」と言うと、女はにッと笑ってみせた。その笑顔を美しいと清三は思った。室の裏は物干しになっていて、そこには月がやや傾きかげんとなってさしていた。隣では太鼓と三絃の音がにぎやかに聞こえた。
三十二
翌日は昼過ぎまでいた。出る時、女が送って出て、「ぜひ近いうちにね、きっとですよ」と私語くように言った。昨夜、床の中で聞いた不幸な女の話が流るるように胸にみなぎった。
渡しをわたって栗橋に出て昨日の路を帰るのはなんだか不安なような気がした。土手で知ってる人に会わんものでもない。行田に行ったというものが方角違いの方面を歩いていては人に怪しまれる。で、かれは昨夜聞いておいた鳥喰のほうの路を選んで歩き出した。初会にも似合わず、女はしんみりとした調子で、その父母の古河の少し手前の在にいることを打ち明けて語った。その在郷に行くにはやはり鳥喰を通って行くのだそうだ。