Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
それよりも、彼の眼を奪ったものは、窓外のすばらしい青空である。指をさしだせば染まりそうに濃い。高く、深く、底なしに澄んで、そこに、馬の形をした雲が、しきりに、早い速力で飛んでいる。白馬の競走のようだ。
「窓を開いて下さい」
と、金五郎は弾んだ語調でいった。
「窓ガラスをお開け」
看護婦が、また、窓を開いた。
金五郎は、いきなり、ベッドの上に立ちあがった。
医者と看護婦とは仰天して、両方から、金五郎の腕を捕えた。
「なにを、無茶なことを……」
「離せ。昇天するんじゃ」
絶叫した金五郎は、ウンと、一つ弾みをつけて、跳躍した。窓から飛びだした。頭と眸とを青空に向け、泳ぐように、両手を天に向かってさしだした。
しかし、次の瞬間、金五郎が自分の身体を発見したのは、天上ではなかった。地面である。しかも、いつか、龍に化している長たらしい全身から、鱗が一枚ずつ剥げ落ちて、ウナギに似た無残さになっていた。そして、金五郎は、自分の前肢が空っぽになっていることに気づいたのである。大事につかんでいた筈の菊の花束がない。
「畜生」
禿げちょろの龍は、口惜しさで、地上をのたうちまわった。