Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
そんな脱出の欲望が、身うごき一つ出来ぬ癖に、発作的におこるのみであった。
……ものものしい白衣の手術着や、マスク、メス、鉄、血と石炭酸のにおい。それから、ばらばらに解体した玩具を修繕でもするように、つなぎあわせてぐるぐる巻きにした白い繃帯。ベッドのうえに、そんな哀れな姿で横たわっている青ざめた金五郎は、誰の眼にも、死んでいるものとしか見えないのに、本人はどこかへ行きたくて仕方がないのである。
病室の中には、陰気くさい空気がたれこめている。重苦しい。窓には明かるい外気があたっているけれども、カーテンがそれを遮断している。
医者が、入って来た。うしろに、銀色の箱を持った看護婦がしたがっている。
医学博士の鹿爪らしい八字髭と、金縁眼鏡とを眺めて、金五郎はいった。
「散歩させてくれませんか」
「とんでもない」医師はびっくりして、「一尺動いたら、死んでしまうよ」
「そんなら、そこの窓から、外を見せて下さい」
「カーテンを引きなさい」
命ぜられた看護婦が、静かにカーテンをめくった。
上部につけられた環の金属音が、鈴を鳴らすように、金五郎の耳に、こころよくひびいた。