Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
暴力
ひるがえる五色の尾にたわむれるように、鳶が一羽。
重い足どりで、うつむき加減に歩いていた金五郎は、声をかけられて、普請場へ寄って行った。チョッキの上に、「玉井組」の半纏を着ている。
「新公、お前まで、大工をやっとるのか」
「いんや、大工をしとるわけじゃない。表玄関にかける座名の看板に、ちょっと、いたずらしょるんじゃ。おれが辰の年じゃもんじゃけ、昇り龍を彫りよる」
金五郎はのぞきこんで、眼を丸くし、
「ほう、うまいもんじゃないか。いつ、そげな芸当を習たか」
「芸当ちゅうほどのもんじゃないよ。龍に見えさえすりゃ、ええとじゃ。……見えんかね?」
「大見えたい」
「そうそう、お前も同じ辰年じゃったなあ。実は、金さん、お前の彫青の真似してな、この龍、……見てくれ。肢に、花をつかんどる」
「こりゃあ、なんの花かね?」
「まだ、形になっとらん。今、彫りよったところたい。椿の花じゃ」
「ふウン」
金五郎は、新之助が、女房を椿と観じたのか、と、奇妙なくすぐったさを覚えた。自分はマンを菊と思い、勝則は良子を百合と考え、新之助は君香を椿と見ている。そして、それらの花々が、いずれも、龍と結びつけられていることに、偶然とはいいがたい宿命のようなものを、金五郎は感じた。