Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme

Aozora Bunko

世界戦争から此方、日本の外国商館は次第に内地の貿易商に仕事を取られてぽつぽつ本国へ引き上げてしまうし、観光客にも昔のように馬鹿なお金を使うようなのが来なくなったのが悪いんだと、当人は云うのだが、あながちそればかりが不振の原因ではないであろう。要がはじめて知った時分には、彼女は今ほど耄碌してはいなかった。生れは英吉利のヨークシャアで、何とか云う女学校を出て、立派な教育を受けたと云うのを自慢にして、日本に十何年もいながらどんな時にも日本語は一と言もしゃべったことがなく、大概な女たちが植民地英語しかしゃべれない中で彼女一人が正確な英語を、それも殊更むずかしい単語や云い廻しを使い、仏蘭西語も独逸語も流暢に話した。そしてさすがに女将株の貫目もあり、活気もあり、何処やらにまだ姥桜の色香さえもあって、西洋人と云うものは幾つになっても若いものだと感心させたのに、そののち少しずつ気が弱くなり、記憶力が乏しくなり、女子供にも押しが利かなくなってから、急に目に見えて年を取るようになったのである。以前はお客をつかまえて、昨夜は何処の国の侯爵がお忍びでいらしったなどと法螺を吹いたり、英字新聞をひろげながら母国の東洋政策を論じて煙に巻いたりしたものだけれど、この頃ではとんとそう云うヤマ気はなく、ただうそをつく癖だけが病気のようになっ