Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
その九
日本の社会が、許しさえすれば僕は一生この状態をつづけていたっていいんだけれどな」
「西洋だってそんな流儀は時勢おくれだよ、宗教の威力がなくなってしまっているんだから」
「宗教に縛られているばかりじゃあない、やっぱり西洋人にしても過去のきずなを余りに判然と断ち切るのが恐ろしいんじゃないのかな」
「どうしようと君の勝手だが、僕はもう御免を蒙むるぜ」
そうにべもなく云い放ちながら、床に落ちたアラビアン・ナイトを、今度は高夏が拾った。
「なぜ?」
「なぜって、分り切ってるじゃないか。そんな曖昧な離縁話に他人が口を挾みようはないじゃないか」
「そりゃあ困る」
「困るのは仕方がなかろう」
「仕方がなくってもとにかく君に逃げられちゃあ困る。捨てておかれるとなお曖昧になるばかりだ。ね、後生だから頼むよ」
「まあ、まあ、今夜弘君を連れて東京へ行って来るよ」
高夏は取り合わないで、そっけなくページを繰った。
その九
「うぐいすも、都の春にあいたけと、きは淀川へ上り舟、………」
お久は絃を三下りにして地唄の「あやぎぬ」をうたっていた。老人はこの唄が好きなのである。地唄と云うものは概して野暮なものであるのに、この唄には何処か江戸の端唄のような意気なところのあるのが、上方に降参したようでも本来は江戸育ちである老人の趣味に合うのかも知れない。