Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme

Aozora Bunko

………あなた、淡路へ行ったんだって?」

「うん」

「誰と?」

「女房の親父と、親父の妾と、三人づれで、………」

「ふん、誰の妾だか分ったもんじゃない」

「なあに、ほんとうだよ、尤もその妾に少々惚れていることは事実なんだが、………」

「そんなら何しに此処へ来たのよ?」

「仲のいいところを見せつけられたから、聊か鬱憤を晴らしに来たのさ」

「御挨拶だわね、………」

知らない者が若しこの会話を部屋の外にいて聞いたとしたら、しゃべっている女が栗色の断髪に茶色の瞳をした種族であろうとは、誰が想像するであろう。それほどルイズは日本語を巧みに話すのである。要はこの頃でも、しゃべりながらふと眼をつぶって、その声の調子と、アクセントと、言葉づかいだけを耳にしていると、ちょうど田舎の小料理屋で酌婦を相手にしている場面が浮かぶのである。ただ外国人の悲しさにはその発音に何処か東北訛りのようなひびきがあって、それでいて云うことが恐ろしく巧者であるだけに、方々を渡り歩いた擦れっ枯らしの女給の言葉になっていることを、当人は夢にも知らないらしい。が、ともかくも暫くその声を聞いた後に再び眼を開いて室内を見ると、何と云う思いがけない光景であろう、彼女は化粧台の前の椅子にもたれて、満洲朝の官服に似せた刺繍のあるパジャマの上衣だけを、ようよう臀と擦れ擦れに着ている