Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme

Aozora Bunko

弘もまだ学校から帰らないし、家の中は森閑として何だか一人取り残されたように静かである。仕方がない、又ルイズにでも会いに行こうか。―――彼はそう思ってみて、こう云う時にいつもきまってそんな気になる自分自身が、なぜだか今日は哀れな男に感ぜられた。たかが相手は一人の娼婦に過ぎないのに、もう二度と行かないの何のと云うむずかしい決心をして、それに囚われるのも馬鹿々々しいと云う風に思い直しては、結局会いに行くことになるのが常であったが、実はそんなことにも増して、妻が出かけて行ったあとの邸の中のガランとした感じ、―――障子や、襖や、床の間の飾りや、庭の立ち木や、そう云うものが有るがままにありながら、俄かに家庭が空虚にされてしまったようなうら淋しさ、―――それが何より堪え難かった。いったいこの家は前の持ち主が建てて一二年にしかならないものを、関西へ移って来た年に買い取ったので、この八畳の日本間はその時建て増したのであるが、毎日見馴れて気が付かないでいるうちに、そう念を入れて拭き込みもしなかった北山の杉や栂の柱が年相応のつやを持ち出して、これからそろそろ京都の老人の気に入りそうな時代が附いて来るのである。