Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 157.440 Zeichen · 313 Bildschirme
最早疑う余地もありません。八五郎等と共に、五重の塔を駆け降りてから平次が再び登って来るまでの咄嗟の間に、だれかがこの五階に引返して、六つ目の箱のふたを開けて、黄金の環を持出して行ったことでしょう。
「――」
平次はこの取返しのつかぬ手ぬかりに、思わず唇を噛みました。
恐らくあの綱を伝わって五階の庇から下へ降りたひょっとこの曲者か、或はその仲間の者が、少しばかりの隙をねらってここに引返し、仕掛けのふたを開けて環を持出したことでしょう。そして下からアタフタと登って来る平次は、二階か三階のあたりで物蔭に隠れて巧みにやり過されたわけです。
八五郎は馬のように飛びました。宵明りの江戸の町を、十手を腰に挾んだのが六人、奔馬の如く駆けるのは、それは穏やかならぬことですが、今はそんなことを考えている余裕もなかったのです。
明神下の平次の住居は、路地の奥の奥で、置き忘れられたようなささやかな家でした。
黒板塀と共同井戸と、格子戸と野良犬と、型の如き道具立ての中を、マラソンの選手のように、飛び込んで来た六人。
「――」
格子戸にすがりつくように、まず八五郎が一と息入れる間もありません。