Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 157.440 Zeichen · 313 Bildschirme
「あッ」
見事にしり餅をついた八五郎は起ち上がって、その後を追いました。が、外は如法のやみ、一寸先も見えません。
念のために家の外を一とまわりしましたが、真っ黒な闇がヒタヒタと身に迫って、鼻の先にうごめくものの見当も付き兼ねる有様。
「どうした八」
ぼんやりもとのお勝手口へ還って来た八五郎の前へ、漸く大男を始末した平次が、気遣わしそうに立って来るのでした。
「逃げっちまいましたよ。恐ろしく素早い女で」
ボリボリと首筋をかく八五郎です。
「お前の方がのっそりしているからだよ。女一人を持て余しちゃ、十手の誉になるめえ」
「ヘエ」
「どんな女だか、見当くらいはつくだろう」
「それがね、親分」
「仕様がねえなア」
「骨細で、斯うフワフワとしておりましたよ。真綿と相撲を取っているようで」
「顔は見ないのか」
「見ませんよ、もっとも、匂いくらいは嗅ぎましたが」
「犬じゃあるめえし、匂いじゃ嗅ぎわけはむずかしかろう」
「ヘエ、兎も角、家のまわりだけでも見て下さいな、親分。その辺に隠れているかわかりません、どうせ遠くへ逃げるすきはなかったはずですから」
「無駄だろうが」
「待って下さい、行燈を持って来ますから」