Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 157.440 Zeichen · 313 Bildschirme
首領の妻
お銀は漸く顔を挙げました。さすがに消えも入りたい風情でしたが、二人の出て行く足音が、路地の外へ遠ざかると、ほっとした心持になるのです。
「――」
平次は黙って杯を取りました。妙に照れ臭いのは、そんな仕業で救うほかはありません。
「少しさめましたか知ら」
銚子を取ったお銀の手はさすがにふるえております。
透き通るような顔に、くっきり眉の青いのと表情的な大きい眼、熟れたグミの唇、すべてが神秘と魅惑との不思議な交錯ですが、真っ黒に染めた歯が一本、無残にも欠けているのが、妙にこの世的な肉感をそそります。
「ところで、こうまで献立をして、いったい何を話そうというのだ」
平次はこの女には、何にかしら深い企みのあることを察して兎も角そのプログラム通り、一人と一人の差向いになったのです。
「親分さん、私は大変なことを、親分さんに聴いて頂いて、親分さんの良い智慧が拝借したいのですが――」
お銀の顔――情熱と神秘の交錯した顔が、平次の側へ近々と寄って、青い眉が肩のあたりを匂います。
「智慧――あいにくそんなものは――」
平次はいつもの八五郎との掛け合いのような調子で受けましたが、お銀の表情の恐ろしく突きつめた真剣さを見ると、さすがに冷やかしもならず、真面目な顔でうなずきます。