Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「万事は、わっしが心得ています。だがねお米さん、向うへ帰ると、もう小ぎたねえ仲間なんかは、ごめんだよッていう顔をするんでしょう」
「宅助、そりゃあ、お前のことじゃないか」
「おっ、いてえ」
「行き過ぎやしないかえ、渡舟の前を」
「そうだ。じゃ明日の晩にまた――」
小戻りをして渡舟の中へ飛び込んだ。
そこで、宅助と別れたお米は、反対のほうへ足を向けて歩きだしたが、ふとふりかえって、
「ちイッ……気色が悪い」と舌打ちをしながら襟前をかき合せた。
「あいつときたら、転んでもタダ起きないのだから嫌になってしまう。人が狂言に涙をこぼせば、その弱音にツケ上がり、いい気になって、とうとう私にあんな真似をしやがってさ……」
と、赤い唇を舐め廻して唾をした。
木津の水を越えて、いつか堀江の町へ入っていた。
その姿が、人混みにまぎれ消えたかと思うと、やがて、急いでゆく町駕の垂れから、お米の裾がはみだして見える。
「……これから四国屋の店へ行って、明日の船へ便乗を頼んでおいてから、すぐに駕を急がせれば、今夜のうちに、弦之丞様に会う時刻があるだろう……。どうしても、阿波へ帰る前に、もういちどしみじみと会って、何かの話をしなければ……。