Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「承りました」
と啓之助、やっと縁口へ立った。
そして、ともかくも、油断のない目を配りながら、有村の挙動へも、時々注視を分けている。
三位卿は、静かに、あたりの器具を片寄せて四角に切ってある炉畳をブスッと持ちあげた。
「や? ――」と、啓之助が驚いて見ていると、有村は、半ばまで上げた畳のへりを片手でささえながら、暗い穴を覗きこんで、
「ふム、不審な姿をした者が……新吉とともにこの寮の潜り門へ、ほウ、桜間……桜間金五郎と申すと能役者らしい名前……なに、たッた今奥へ入ったというか、おお……そしてどこの部屋へ? ……」
などとしきりに床下と話しはじめた。
下には覆面をまとったひとりの原士――さっき農人橋の上で腕をくんだあの侍が――蟇のように身を屈していた。そして今、この寮の裏で見届けた事実を告げている。
能役者――桜間金五郎――紫紺の頭巾に銀杏笠の女? ――それらを端的に頭の中でつづり合せながら、三位卿、しばらく小首をかしげた後、
「これ」と、いっそうかがみこんで、
「ことによるとそやつこそ、弦之丞にお綱のふたりであろうもしれぬ。しかし、迂濶に先へ気どられて、せっかくこれまでおびきよせた長蛇を逸してしまっては何もならぬ」