Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
どうせこちとらはあなた任せ――」
「そうだねえ?」
と、お米が陸を見上げた時に、船の先が、ちょうど橋の下をこぎ抜けていた。
すると、その時、太郎助橋の欄干を、向う側からこっちへ移って出てくる艀を見なおそうとしている年増の女があった。
「おやッ。川長のお嬢さん? ――」
こうびっくりした顔をして、女はのめり込むように川を覗いた――ぞんざい結びの止めに挿してある、珊瑚の脚がヒョイと抜けそうになるのを抑えて、
「もし! お米さん――お米さんじゃございませんか」
不意に名を呼ばれたので、オヤ? と思ったらしく、お米も橋の上を見上げたが、にわかに、すぼめていた日傘をパチッと開いて、
「あ――船頭さん、もう少し先までやって下さいな。少し、急いでね」
と、日傘のかげに身を隠したまま、人違いと思わすように、そしらぬ顔で艀を進ませた。
「あれ? ……」
橋の上へ取り残された年増の女は、不思議そうな目を、その日傘の色へ追っていた。それは、目明し万吉の女房――お吉であった。
「人違いだったかしら? ……だが、どうしても、今のは、お米さんのようだったけれど」
こうつぶやいて、気をとられている眸の先を、ツウと、燕が白い腹を見せてかすった。