Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
で、萩に吹きよせられている紙片は、誰にも探しだされずにあるが、ふと目にとめたのは窓によっていたお千絵様。しかしまた、お千絵は皆がそんなに騒いでいたものとは知らない。
ただ、さっきからの空虚な目のやりばとしていた。
すると。
白い紙きれはまた少しの風に萩の枝を離れて、お千絵の視線を慕ってきた。
「おや?」
かの女は初めて好奇の眼を見ひらいて、竹縁から庭下駄をはいた。そして、元の窓へ返ってきてよく見ると、西判の生紙に美女の顔が描いてある。絵には違いないが、雅味も線の妙味もなくて、おそろしく無駄を省いた人相本にあるような描き方であった。
だがお千絵は、それを見たとたんに不思議とひきつけられて、思いがけない人に逢ったような動悸さえうった。
「どこかで見たようなお方? ……」
と、ジッと見つめていると、単調な線描きの女の顔が、自分に微笑を向けてくるように感じられだした。
魚眼という張りのある眼、彫りのふかい鼻すじ、眉の形、いい唇、個々に見れば見るほど、なおどこかで記憶のある女の顔であった。
その側にはまたこういうことが書いてあった。
――身長並、痩せ形、髪くろく色白、右の眉尻に黒子、他に特徴なし、年二十四、当時無宿、江戸浅草孔雀長屋人別、紋日の虎五郎娘、女賊見返りお綱。