Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
元和以前、海をこえて、日本へ宣教に来られた、スペインの女修士、ご承知でもございましょう。五十五聖徒の殉教者のひとり、老女ルシヤ様のつれていた娘が、後に、天草の原ノ城へ入りました。
孫兵衛の母者人イサベラ様はマリヤの笄とともに、その異国の人の血をひいてきたお方でございます。ほんとに円満な、聖母そのままな、慈愛の深いお方でした。
あのお方のことを思うので、私はつい涙ぐまれるのでございます……。
そんないいお人のイサベラ様の子に、悪魔孫兵衛が生れました。なんという皮肉、イサベラ様は生涯孫兵衛のことでご苦労なさいました。死ぬまぎわまで……。
ですが。
どうしてそういう人が、阿波にいるかというご不審をおもちでしょう。川島郷の七人衆の原士、あの方々も寛永の昔、島原の一揆戦がみじめな敗れとなった時、天草灘から海づたいに、阿波へ漂泊してきた落武者の子孫なのでございました。
孫兵衛の母イサベラ様の幾代目かの御先祖――黄金色の髪の毛に愛くるしい琥珀の眼をもった異国娘も、その時、武装した切支丹武士に手をひかれて、阿波の海辺へ上がりました。
そのような話、冬ごもりの炉べりでは、私の子供の時など、よく年寄から聞かされたものでございます。