Japanische Klassiker mit Furigana
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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Lesen Sie あさひの鎧 (あさひのよろい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 239.520 Zeichen · 475 Bildschirme
と、不意に、
「小次郎!」
と呼ぶ声が、どこからともなく聞こえて来た。
ギョッとして二人は足を止めた。
「小次郎や」
という声がまた聞こえた。
それは頭上から来るようであった。
振り仰いだ二人に見えたものは、薄白い築地を蔽うようにして、黒く茂っている植え込みを抽んで、聳えている高殿の姿であり、その高殿の廊の欄干に、のしかかるように体を寄せて、じっと二人を見下ろしている、絵本で見た玉藻前のような、飛天夜叉桂子の姿であった。
二人はハ――ッと息を飲み、足を釘づけにしてガタガタ顫えた。
と、桂子の右の手が、高く頭上にかざされて、長い袖が絞れ渦巻いて、車輪のように廻ると見えた。
瞬間、小次郎の体は宙に浮き、築地に添い植え込みに添い、高殿の方へ釣り上げられていた。
「あッ、あッ、あッ」
と云ったかと思うと、浮藻はグラグラと眼が廻った。
「神様! おおおお、お助けくださりませ!」
口の中でそう叫び、あまりの恐ろしさに眼を閉じた。
でもその眼をひらいた時には、もっと恐ろしい光景が――高殿の廊で二人の男女が、抱擁している光景が、悪夢のように映って見えた。
「余りな……お姉様……あんまりな!」