Japanische Klassiker mit Furigana
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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
Lesen Sie それでも私は行く (それでもわたしはいく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.708 Zeichen · 181 Bildschirme
九
テーブルの上のマッチを持ってベッドに近づくと、客はいきなりはね起きて、ものも云わずに千枝子を抱きすくめた。
九
「あっ! 何をなさるの……?」
千枝子は身をもがいて逃げようとしたが男は離そうとしなかった。
そして、背中を抱いた手を胸の柔いふくらみの方へ廻して、ギュッと力を入れながら頬をくっつけて来た。
大きな声を立てるには、千枝子はあまりにおとなしい女であった。ただ、低く、
「いや、いや!」
と、云いながら首を動かしていると、酒くさい息がいきなり近づいて、唇が触れた。
思わず、顎を引いて、離そうとしたが、男の唇は執拗に追うて来た。
千枝子は必死になって、唇を固く閉じていた。
が、だんだん息苦しくなり、
「ああ――」
と、唇をひらいて息を洩らした途端、千枝子は思わず熱っぽく酒くさい息を吸い込んだ。
やがて気の遠くなるような、やるせなさが、ふと千枝子の体をしびらせ、いつか千枝子の手は相手の背中を抱いていた。
「ああ、浅ましい」
と手を離した途端、男は千枝子の体をベッドの上へ倒すと、パチリとスタンドの燈を消した。
「ああ、いけない。それだけは……」
暗がりの中で、千枝子は叫びながら、はね返そうと身もだえした。