Japanische Klassiker mit Furigana
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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
Lesen Sie それでも私は行く (それでもわたしはいく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.708 Zeichen · 181 Bildschirme
十
それとも商売女の悲しさだろうか。こんなひどい目に会わされながらしかも、いつか男にしがみついていたという女の生理の脆さも恨めしかった。
「どうだ、泊るだろう」
男に命令的に云われると、千枝子はもう弱い女だった。だまってうなずいた。帰るとはもう云えなかった。
「あはは……泊るなら泊ると云えばいいのに……。じらす奴があるか。着物に皺がよるだけ損じゃないか。あはは……しかしたまには、皺くちゃになってみるのもスリルじゃよ」
千枝子は半泣きになった。最初の貞操をこんな風に簡単に汚されながら、しかもそれが安価な金銭に換算されてしまうのか。
朝、千枝子は蒼ざめた顔で、貸席を出た。細長い路地をうなだれてトボトボ出て来ると、
「姉さん!」
と、いきなり呼ばれた。鋭い声だった。
はっと顔を上げると、妹の弓子が怖い顔をして突っ立っていた。
十
思いがけぬ時に、思いがけぬ妹の弓子を見て、千枝子はどきんとした。
千枝子は弓子より二つ年長でありながら、何か自分の方が年下のような負け目を感じていた。水のように、ずるずると環境のままに流されて行き易い自分にくらべて、弓子の性格は火のようで、意志が強く、弓を引きしぼった精一杯のギリギリの生き方をして行きたい娘であった。