Japanische Klassiker mit Furigana
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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
Lesen Sie それでも私は行く (それでもわたしはいく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.708 Zeichen · 181 Bildschirme
弓子はその手を振り離そうとしたが、望月は執拗に離さなかった。
「離してよ」
「離さない」
己惚れの強い望月は、自分の美貌と人気(ことに歌の魅力)を以ってすれば、どんな女も自分を拒まないという自信を持っていた。おまけに、自分は弓子の秘密を握っているのだ。この手のように握っているのだ。だから、簡単に誘惑出来ると思い、いきなりそんな振舞いに出たのだった。
一つには、一体に旅館の部屋というものは、旅情的な女恋しさの情をそそるように出来ているので、君勇にふられた不満を、君勇よりももっと新鮮な魅力のある弓子の体に求めようとして、思わず知らずわれを忘れて手を出そうとしたのかも知れない。何れにしても莫迦げた真似を、望月はしたものだ。
果して、ピシャリと撲られたのだ。望月としては、自尊心を傷つけられること、おびただしいものがあった。
「もうこうなれば、意地でもこの娘を誘惑しなくてはならない」
望月はそう思って、あくまで手を離さなかったのだ。
「離さなければ、声を出すわよ」
弓子は弱身を見せまいとして、キンキンした声で言った。
「そりゃよした方がいい。声を出すと、君のためにならん」