Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
追憶と眼前の風景
大海のうねりの様に、野から野にかけて穏かな円みを持った岡が柔かな草に掩われて連り亘っているのであるが、その中でもやや大きな岡のあるのを見ると道から逸れてその上へ登って行った。そして其処へ腰をおろして両手で膝を抱きながら眼の前に聳えた富士を仰ぐのが楽しみであった。空は紺青色に晴れているのだが、何処からとなく薄い雲が生れては富士の方へ寄って行って、やがてまた夢の様に消えていた。その雲も眩ゆく寂しく、その雲の落すうす黒い影の動きも富士の肌えに寂しく仰がれた。
二三里をひたすらに草の中を歩いて、印野村へ出た。須山より更に小さい野中の村であった。通り抜けるとまた野原である。更に二三里を歩いて御殿場へ出た時は、漸く正午に近い頃であった。
ひそやかにもの云ひかくる啼声のくろつがの鳥を聞きて飽かなく
草の穂にとまりて鳴くよ富士が嶺の裾野の原の夏の雲雀は
夏草の野に咲く花はたゞひといろ紅空木の木のくれなゐの花
寄り来りうすれて消ゆる真日中の雲たえまなし富士の山辺に
追憶と眼前の風景
私は日向の国尾鈴山の北側に当る峡谷に生れた。家の前の崖下を直ぐ谷が流れ、谷を挟んで急な傾斜が起ってほぼ一里に渉り、やがて尾鈴の嶮しい山腹に続いて居る。