Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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スウィスにっき

スウィス日記

辻村 伊助

Lesen Sie スウィス日記 (スウィスにっき) von 辻村 伊助 (つじむらいすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 216.275 Zeichen · 410 Bildschirme

Aozora Bunko

ている。

朝飯のうちに、窓にも朝日がさしはじめて、左にあるウンテル・スルツバッハの谷奥には、まるで曇り硝子に日がさしたように、淡い霧の中に、氷河か雲か、ギザギザにひび割れた、山頂の一角が隠見する。宿の婆さんは、私が日本から来たと話すと大喜びで、宿帳を持ち出して、名前を書いてくれと云った。停車場の名にまでついてるくらいだから、グロース・ヴェネディガーのすぐ麓だと思っていたが、だんだん晴れたのを見ると、ここから頂上は随分遠そうだ。

宿を出ると、線路を横切ってサルツァッハに渡した丸木橋をわたって、オーベル・スルツバッハの谷に入る。百姓家が一軒あって、路はそこで終ってしまった。遠慮なしに裏口へ廻ると、牧場の柵になっている、見当がつかないから、それを飛びこして南へ南へと登って行った。原から、上は樅と落葉松の交じった密林になって、頭の上の方に見える雪のそばまで、景色に変りはなさそうだ。草の上に寝ころんで、煙草をふかしながら見まわした。

原には一面に勿忘草が空色に咲いて、野生の三色菫に、黄色の桜草がある。それから小さなリンドウ Gentiana verna の、さえた瑠璃色が、何とも云えず美しい。