Japanische Klassiker mit Furigana
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スウィスにっき
スウィス日記
辻村 伊助
Lesen Sie スウィス日記 (スウィスにっき) von 辻村 伊助 (つじむらいすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 216.275 Zeichen · 410 Bildschirme
あるだけで、あとのロールはどこかに振りとばしてしまった。取り敢えずその二枚で記念にすぐ撮影した。が、あわてたと見えて、二枚とも同じような位置で撮したのは、今思えば少々気がきかなかった。時間はと思ったが、腕時計は無論めちゃめちゃに損れて、針が折れてるから遭難の時刻も、大凡三時半ぐらいとは思われるが、本当のことはわからない。然しもうこの時には、日は次第に、淡い氷の紫だった、アイガーの空に傾いて、無事な身体でさえ、小屋までの崖路と、水づいた新雪の下山は、一通りなことではなかったのである。
「●遭難の後」のキャプション付きの写真
●遭難の後
フォイツと近藤君は、大声をあげて麓をのぞんでは、助けを呼んでいる、叫び声は背ろに背負ったクーロアールに反響して、物凄く聞えるが、私達が瞰下ろすシュレック・フィルンには、墓原のように氷塔の入り乱れたのを見るばかり、声は徒らに消えて、生きたものの答えは聞かれない。私はふと、太洋の波に沈もうとする舟人が、帆綱の端にかじりついて、誰を呼ぶというあてもなく、狂い叫ぶ様子を思い浮かべた。どうせ助からんのなら、どなって見るのもよかろうが、今の私達は麓に残して来た小屋があるのに、下らない叫び声に力を費やすのは馬鹿げておると感じた。